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歴史的価値とは
2012年 09月 26日
この古建築は1820~30年代(天保年間)に建てられた民家である。 約200年、江戸時代、明治、大正、昭和、平成と生き延びてきた本物の古建築物である。 写真を見れば分かると思うが、既に庭の木々も切られて解体を待つのみの状態だ。 このお屋敷のご主人は父の友人だったため、屋敷の解体が始まる直前にその雄姿を残したいと 申し出た私の願いを快く受け入れてくださった。 「思う存分撮ってやってくれ。」と一言だけ言った。 今、室町時代から続く大阪で最古と言われている、大阪市淀川区「渡辺邸」が上の屋敷と同じ状況に なっているという。理由も同じで相続税が払えずに売却するというのである。 お屋敷が解体された後は、土地が小さく分割され戸建ての家が建つのが通常で、写真のお屋敷跡も 今では数十件の趣きがあるとは決して言えない同じような家が立ち並んでいる。 お屋敷の歴史と比べると解体する時間と言うのは一瞬の出来事であろう。 その一瞬の出来事で全てを失ってしまうのである。 もちろん、文化財法に守られて旧家の所有者が全て何もせずに先祖代々のお屋敷を維持できると いうことだけを望んでいる訳ではないけれども、やはり歴史的価値があるものだけは見分けて、 保存し、未来に伝えていく事が大事だと思う。 歴史的価値とは、そのものが持っている時間の重みにほかならないと思う。 電気も重機もガスも何もない時代に職人の意気込みだけで建てられた建築物は細部までこだわりで満たされている。 今の、技術では再現できない匠の業も多いと思う。 そう言った歴史の重みを持った藝術品を今後我々はどれだけ後世に残すことが出来るのか・・・・。 最後に、写真のお屋敷のご主人の最後の一言が今でも耳に残っている。 「先祖代々守ってきた屋敷を自分の代で失くしてしまうことは、どんな事にも変えられないくらいに無念である」 渡辺邸が、どんな形であれ残されることを祈ります。
by eos1d3
| 2012-09-26 19:58
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